日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ca] 食品分析

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 C会場 (3F N323 )

座長:小木曽 加奈(長野県立大学)、中津 沙弥香(広島県総合技術研究所)、近藤 徹弥(名古屋文理大学)

09:00 〜 09:15

[3Ca-01] 低分子有機化合物検出のためのグラファイトシート支援レーザー脱離イオン化質量分析法の構築

*矢羽田 歩1、劉 卓非2、有馬 継士郎2、西木 直巳3、桑原 涼3、石谷 伸治3、大野 直土4、今村 美穂4、松井 利郎1,5、田中 充1,5 (1. 九大・五感応用デバイス研開セ、2. 九大・院・生資環、3. パナソニックホールディングス(株)、4. キッコーマン(株)研究開発本部、5. 九大・院・農)

キーワード:グラファイトシート、レーザー脱離イオン化、質量分析、低分子化合物、食品分析

【目的】当研究室では,グラファイトカーボンブラック(GCB)がレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)のイオン化支援材として有用であることを見出し,従来のマトリックス支援LDI-MS(MALDI-MS)において問題とされていた低分子領域でのノイズの低減と,低分子化合物の網羅的検出を達成した.そこで本研究では,GCB調製の再現性と簡便性を図ったシート状のグラファイト材料を開発し,その有用性の検証を試みた.【方法】ポリイミドフィルムを原材料として,3000℃で加熱することでフレキシブルなグラファイトシートを作製した.グラファイトシートに,アミノ酸混合溶液(500 pmol/0.5 µL),ポリエチレングリコール(PEG, 平均分子量300–10,000 Da, 500 pmol/0.5 µL)および,しょうゆ試料(10-10,000倍希釈)をそれぞれ0.5 µL滴下・風乾し,LDI-MSに供した.【結果】グラファイトシート支援LDI-MSでは,MALDI-MSでみられた低分子領域のノイズは明らかに低減し,本法が低分子化合物の検出に有用であることが示された.次いで,アミノ酸を供したところ従来のMALDI-MS法とは異なり,すべてのアミノ酸の検出が達成された.また,PEG検出において,100–2,000 m/zの範囲の化合物検出が可能であることが判明した.さらに,本法を用いてしょうゆを分析した結果,グラファイトシート支援LDI-MSでは正イオンモードにおいて252本,負イオンモードにおいて289本のMSシグナルが観測され,MALDI-MS(正イオンモード:36本, 負イオンモード:22本)と比較して網羅性の高い化合物検出特性を有していることが示された.以上の結果より,グラファイトシート支援LDI-MSが,低分子有機化合物の分析に有用であることが示された.