日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3La] 発酵、酵素利用

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 L会場 (2F N205)

座長:小林 元太(佐賀大学)、成澤 直規(日本大学)、藤田 智之(信州大学)

10:45 〜 11:00

[3La-08] 木桶仕込み醤油の特性評価

*君島 愛美1、坂巻 祥子2、高塚 絢巳2、成澤 直規1、岡本 希1、金澤 一人1、竹永 章生1 (1. 日大院 生物資源科学、2. 曽田香料株式会社)

キーワード:醤油、木桶

【目的】木桶を用いて造られる醤油は,ホーローやステンレス,プラスチック素材のものと比べて呈味や香気が異なることが明らかとなっている.一方で,その違いの原因についての検討は不十分である.本研究では,実験室スケールで製造された木桶醤油の経時的な成分変化について検討を行った.
【方法】木桶(スギ素材)は4.8 L容(高さ25 cm,直径21 cm)を使用した.醤油麹1.3 kgに23%(w/v)食塩水2.3 Lを加え,よく混合した.発酵は室温(25℃±2℃)にて行った.なお,プラスチック製の桶で仕込んだものを比較対象とした.発酵28,63,117,181,236日目の各もろみを圧搾し試料とした.全窒素量の測定はケルダール装置(ゲルハルト社製)を使用した.酸度は醤油分析法に準じて測定した.有機酸分析は試料を0.2 µmのフィルター処理後,有機酸分析装置(島津社製)にて評価した.香気捕集はMPS(Gerstel社)によるDHS-MVMモードにて行い,8890 GC/5977C(Agilent社)により測定した.
【結果】木桶醤油において,発酵日数の経過と共に全窒素量が増加し,発酵236日目で1.76 w/v%に達した.プラスチック桶醤油の全窒素量は,木桶醤油と比べて低い値で推移し,発酵236日目では1.13 w/v%となった.木桶醤油における酸度は15%前後で推移し,発酵236日目では18.5%に達した.有機酸分析の結果,木桶醤油ではクエン酸,コハク酸,乳酸,ピログルタミン酸が優占であることが明らかとなった.プラスチック桶醤油における酸度,および有機酸は木桶醤油と類似の特徴を示したが,発酵期間を通じて低い値となった.香気分析の結果,発酵28日目ではアルコール類が多く,発酵の経過とともに酸類が増加した.さらに236日目ではフェノール類や硫黄化合物,窒素化合物など多様な香気成分の生成を確認した.