日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ba] 生理活性物質

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 B(S3)会場 (3F N322)

座長:高橋 正和(福井県立大学)、牧野 義雄(香川短期大学)、山本 晃司(あいち産業科学技術総合センター)

11:00 〜 11:15

[3Ba-08] アスタキサンチン異性体の簡便かつ経済的な分析方法の開発

*Ghosh Antara1、西田 康宏2、本田 真己1 (1. 名城大学、2. 富士化学工業株式会社)

キーワード:カロテノイド、アスタキサンチン、幾何異性体、高速液体クロマトグラフィー、食品分析

【目的】アスタキサンチンは海洋に広く分布するカロテノイドであり,強力な抗酸化作用に加え,多様な健康効果を有することが報告されている.アスタキサンチンは分子内に複数の共役二重結合を有するため,多数のシス-トランス異性体が存在可能である.しかし,天然では二重結合がすべてトランス体の異性体(トランス型)が優勢である.近年,二重結合の一部がシス体に異性化したアスタキサンチン(シス型)が,トランス型よりも体内吸収性と生理活性が高いことが報告され,注目を集めている.しかし,アスタキサンチン異性体の正確な分析は未だ困難である.よって本研究は,逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて,アスタキサンチンの異性体を正確に分析できる条件を見出すことを目的とした。
【方法】C18,C30,コレステリル基結合シリカゲルカラムを固定相として用い,移動相溶媒の組成やカラム温度を変更することにより,分析条件を最適化した.主要なアスタキサンチン異性体(トランス型、9シス型、13シス型,15シス型)が短時間で明瞭に分析(分離)可能な条件を探索した.また,最適な分析条件を用いて,食品や化粧品に含まれるアスタキサンチン異性体を分析した.
【結果】C18とC30カラムを用いた場合,移動相とカラム温度を最適化することにより,主要なアスタキサンチン異性体を明瞭に分離することができた.コレステリル基結合型カラムも異性体を分離できたが,C18とC30カラムと比較すると分離能は劣っていた.C18カラムを用いた場合,メタノールと水というシンプルかつ経済的な移動相組成により,20分以内に異性体を明瞭に分離できたことから,これを最適な分析条件とした.この分析条件を用いて,様々な食品や化粧品中のアスタキサンチン異性体を厳密に測定することができた.いくつかの食品中にはシス型アスタキサンチンが豊富に含まれていることを明らかにした.