日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムA

[SA2] シンポジウムA2:「やさいが彩る毎日のしあわせ~ウェルビーイングを産官学連携のちからで~」
産官学連携シンポジウム(産官学連携委員会・一般財団法人旗影会共催 後援:農林水産省)

2024年8月29日(木) 14:30 〜 17:15 名城ホール (1F N101)

世話人:船見 孝博(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、田中 敏治(キユーピー株式会社)

15:10 〜 15:40

[SA2-02] 野菜をめぐる情勢と消費拡大の取組について

*宇井 伸一1 (1. 農林水産省 農産局 園芸作物課 園芸流通加工対策室)

キーワード:野菜の消費拡大

【講演者の紹介】
 宇井伸一(ういしんいち)農林水産省農産局園芸作物課園芸流通加工対策室長
 略歴:1998年4月農林水産省入省.植物防疫,食品安全,鳥獣被害対策,研究開発等の施策に従事.2023年4月より現職.

(野菜をめぐる情勢)
 我が国の農業において,野菜は,総産出額の約1/4を占める重要な品目である(令和4年の農業総産出額9兆0,015億円,野菜産出額2兆2,298億円).一方,野菜の作付面積や生産量は,長期的には微減傾向にある.
 野菜の用途別の仕向け先を見ると,食の外部化などを背景に,野菜の需要は家計消費量から加工・業務用に徐々にシフトしており,近年では加工・業務用が全体の過半を占めている.このうち,家計消費量はほぼ全量が国産であるのに対し,加工・業務用は,定時・定量・定価格・定品質(いわゆる4定)の供給に対応が可能な輸入野菜が増加したことにより,現在の加工・業務用の国産割合は7割程度で,約3割を輸入が占める状況となっている.
 また,加工・業務用の需要において,特に,カット野菜や冷凍野菜の販売が増加傾向にあり,中でも冷凍野菜については,長期保存が可能で調理の利便性が高い点や品質の良さが評価され,需要が増加している.
 農林水産省では,加工・業務用のうち約3割を輸入が占めている状況や,特定の国からの輸入量が多く,海外調達の不安定化によるリスクがあることを踏まえ,加工・業務用を中心とした,国産野菜の生産や活用拡大を図る「国産野菜シェア奪還プロジェクト」を令和6年4月に立ち上げた.この中で,国産野菜の生産や活用拡大に取り組む意欲のあるサプライチェーンの各段階の関係者からなる全国活動組織の設立や関係者のマッチング,活動のサポートを行っているところである.
(野菜の消費拡大の取組)
 野菜は,豊富な栄養素を含んでおり,ビタミン,ミネラル,食物繊維等の重要な供給源であることから,健康づくりの指標である「健康日本21(第三次)」において,20歳以上の1人1日当たりの摂取目標値は350gとされている.しかしながら,現状の摂取量は平均280g程度となっており,約7割の人が目標に達しておらず,また,特に男女ともに20~40歳代で不足が目立っている.
 このような中,農林水産省では,野菜の消費拡大を目的とした「野菜を食べようプロジェクト」を令和2年に立ち上げた.このプロジェクトでは,1日当たりの摂取目標量350gを示したポスターや共通のロゴマークを作成・活用するとともに,プロジェクトに賛同する企業・団体等の「野菜サポーター」と連携し,消費者に向けたさまざまな情報発信や取組を展開している.また,近年開発された野菜の摂取状況を測定できる機器による「野菜摂取量の見える化」の取組など,新たな手法や情報も活用しつつ,消費者の理解促進と消費拡大を図っていきたいと考えている.